遺産相続において、法定相続分(民法で定められた遺産分割の割合)による相続よりも、遺言による相続の方が優先されます。ご自身の大切な財産をどのように渡していくのか、大切なご家族のためにも遺言書を作られる事をお勧めします。
遺言書を残していれば、ご遺族にはそのご遺志を尊重する気持ちが芽生えます。
遺言書がない場合は、相続人の間で、遺産分割協議をしなければならず、揉め事に発展してしまうかも知れません。
特に遺言書の必要性が高いのは、次のようなケースです。
- 夫婦に子供がいない
- 再婚し、前妻との間に子供がいる
- 相続人以外の第三者に遺贈する
- 特定の者に事業を承継させたい
- 相続人がいない
遺言書にはいくつかの作成方法がありますが、多くの方が利用している遺言書は、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
ここでは、公正証書遺言について、その作成方法及びメリット・デメリットを見ていきます。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人に作成してもらう遺言書のことです。自筆証書遺言とは異なり、公証役場で公証人や証人の立ち合いのもと、公正証書として遺言書を作成します。
文字を書けなくても作成可能です。また、公証役場に行けない場合は、ご自宅や病院や施設などへ公証人に来てもらい作成することも可能です。
公証役場で原本を保管してくれるため、家庭裁判所の検認が不要です。遺言書が無効となってしまったり、発見されなかったり、偽造・破棄されたりするリスクを避けられるといったメリットがあります。
それでは次に、どのようにして公正証書遺言を作成するのか、その流れを見ていきましょう。
公正証書遺言の作成手順
遺言書の原案を作成する
ご自身がどのような財産を有しているのか、それを誰にどのような割合で相続させ、または遺贈したいと考えているのか、遺言内容の原案を作成します。
必要書類を準備する
遺言書の原案作成と同時に以下の必要書類を準備します。
- 遺言者本人の確認資料
遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書。
印鑑登録証明書に加えて、運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどの官公署発行の顔写真付き身分証明書も併せて遺言者の本人確認資料にすることもあります。 - 遺言者と財産を渡す相続人との関係がわかる戸籍謄本
相続人が甥、姪など、その本人の戸籍謄本だけでは遺言者との続柄が不明の場合は、その続柄が分かる戸籍謄本。 - 受遺者(財産の遺贈を受ける者) の住民票
遺言者の財産を相続人以外の者に遺贈する場合は、その受遺者の戸籍謄本ではなく住民票が必要。なお、受遺者が法人の場合は、その法人の登記簿謄本。 - 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)・固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書
遺言者の財産に不動産が含まれている場合。 - 相続財産に預貯金や有価証券が含まれている時
銀行名(証券会社名)や口座番号(証券番号)がわかる資料、金融機関の通帳など。 - 証人の確認資料
ご自身で手配する場合、証人予定者2名の方の氏名、生年月日、住所と職業のわかる資料。
この証人については、誰でもなれるものではなく、推定相続人、受遺者とそれぞれの配偶者、直系血族等の利害関係人や未成年者等は証人になれません。適当な証人がいないときは、公証役場で証人を手配することもできます。勿論、行政書士に依頼していただくことも可能です。 - 遺言執行者の特定資料
相続人又は受遺者が遺言執行者になる場合は特定資料は不要ですが、それ以外の人を遺言執行者とする場合は、その人の氏名、生年月日、住所、職業を確認できる資料が必要になります。
遺言書原案と必要書類の提出
遺言書の原案と必要書類の準備ができたら、公証役場に提出します。
公証人との打ち合わせ
公証人と遺言内容について打ち合わせをして、内容の補足、修正など調整を行っていきます。提出した原案と必要資料に基づいて、公証人は公正証書遺言の案を作成して遺言者に提示しますので、修正したい箇所があれば、公証人がその案を修正します。公正証書遺言の案が確定したら、作成日時を決めます。公正証書遺言の案が確定することで手数料の金額も確定しますので、公証人から手数料の金額について提示されます。
作成日当日
日程が決まったら公証役場へ行きます(または自宅・病院・施設などに来てもらう)。証人2人の立ち合いのもと、公証人から公正証書遺言の内容の読み聞かせを受けますので、内容に誤りがないことを確認し、署名押印(実印)します。遺言者と証人2人の署名押印が済んだら、公証人が署名押印します。最後に手数料を支払って完了です。
原本は公証役場に保管され、正本と謄本は持ち帰ります。
それでは最後に公正証書遺言のメリットとデメリットを確認しておきましょう。
公正証書遺言のメリット・デメリット
メリット
① 公証人が作成するので、遺言内容不備により無効になることはない
② 発見されなかったり、第三者に偽造・破棄されたりするリスクを避けられる
③ 家庭裁判所での検認の手続きが不要
公証人と証人のもとで作成され、原本が必ず公証役場に保管されているので、相続開始後速やかに手続きを進める事ができる
④ 自筆で書く必要がない
体力が弱ったり、病気などの理由で自書が困難になった場合でも、自筆証書遺言と違って公証人に遺言書を作成してもらえます。
⑤ 公証人の出張が可能
遺言者が高齢で体力が弱り、または病気などために公証役場に出向くことが困難な場合には、公証人がご自宅、施設、病院などに訪問して作成することができます。
デメリット
① 費用がかかる
公証人への手数料がかかります。手数料は、遺言の目的とする財産の価額によって変わります。また証人を自分で手配できない場合には、証人への報酬が別途かかります。
② 手続きに時間がかかる
公証人との打ち合わせ、証人2人の依頼、必要書類を収集する必要があります。公証人との打ち合わせも数回かかります。
③ 公証人と証人の前で、内容を口述する
自筆証書遺言は自分以外の誰にも知られずに作成することができますが、公証人と証人2人にはその内容を知られることになります。もっとも公証人と証人には、守秘義務が課せられているので外部に漏れることはないでしょう。
公正証書遺言は、自筆証書遺言と比べると、手間も時間も費用もかかりますが、法的に有効で、紛失、偽造の心配のない遺言書を作成することができます。
ただし、どのような内容の遺言にするかという点については、公証人が考えてくれる訳ではありません。自分自身で事前に準備しておく必要があります。
納得できる遺言書を作りあげるためにも専門家にあらかじめ相談しながら原案を作られる事をおすすめします。また必要書類の収集や公証人との事前打ち合わせを行い、ご負担を軽減いたします。お困りのことがありましたら、お気軽にご相談下さい。
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