自筆証書遺言を無効にしない書き方と要件 メリット・デメリットについて、わかりやすく解説します

遺産相続において、法定相続分(民法で定められた遺産分割の割合)による相続よりも、遺言による相続の方が優先されます。ご自身の大切な財産をどのように渡していくのか、大切なご家族のためにも遺言書を作られる事をお勧めします。

遺言書を残していれば、ご遺族にはそのご遺志を尊重する気持ちが芽生えます。
遺言書がない場合は、相続人の間で、遺産分割協議をしなければならず、揉め事に発展してしまうかも知れません。

特に遺言書の必要性が高いのは、次のようなケースです。

  • 夫婦に子供がいない
  • 再婚し、前妻との間に子供がいる
  • 相続人以外の第三者に遺贈する
  • 特定の者に事業を承継させたい
  • 相続人がいない

遺言書にはいくつかの作成方法がありますが、多くの方が利用している遺言書は、自筆証書遺言と公正証書遺言です。

ここでは、自筆証書遺言について、その書き方及びメリット・デメリットを見ていきます。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、ご自身が自筆で書いて作成する遺言書のことです。
パソコンで作成したり、他人に代筆させたりすることはできません。他人が容易に偽造できてしまう事を避けるためです。

ただし、自筆証書遺言に添付する財産目録に関しては、法改正により2019年1月13日からパソコンでの作成または通帳のコピー・不動産登記簿謄本の写しの添付でも可能になりました。

紙とペンがあれば、内容を誰にも知られずに、自分一人で作成できます。また費用もかかりません。
この点がメリットと言えます。

ただし、自筆証書遺言は手軽に作成する事ができる反面、民法に規定されている要件を満たさなければ無効になってしまう点がデメリットと言えます。

民法968条自筆証書遺言

①自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

②前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれに一体のものとして相続財産の全部又はその一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉に署名し、印を押さなければならならない。

③自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

それでは次に、具体的にどのようにして自筆証書遺言を書いていくのか見ていきましょう。

遺言書を書く準備をする

遺言書を書き始める前に、まずは準備しておかなければならない事があります。

  ①財産を把握する

  ②誰が相続人になるのか確認する

  ③誰にどれだけ財産を渡すのか決める

財産を把握する

遺言書を書き始める前に、ご自身の財産を把握する必要があります。以下のような財産をもれなくリストアップします。

  • 現金・預貯金
  • 土地・家屋などの不動産
  • 有価証券
  • 自動車・絵画・骨董品・貴金属などの動産
  • ゴルフ会員権
  • 資産だけではなく、負債があればその負債項目

尚、財産目録を作成するかどうかですが、遺言書を作成する時に、財産目録を作成することは任意で、無くても無効になることはありません。

しかし、ご自身の財産をきちんと調査したうえで、財産目録を作成しておく事をおすすめします。

財産目録を作成する過程で、ご自身でも把握していなかった財産が見つかることもあるからです。

相続発生後に、遺言書に記載されていない財産が見つかった場合、その財産について相続人は遺産分割協議をしなければならなくなり、トラブルに発展してしまうかも知れません。

民法改正により、2019年1月13日から財産目録はパソコンで作成することも、また代筆でも認められるようになりました。
財産目録の代わりに、通帳のコピー・不動産登記簿謄本の写しなどを添付することもできます。
注意点としては、パソコンや代筆によって作成した財産目録または通帳のコピー・不動産登記簿謄本の写しを添付した場合には、各ページごとに(両面に渡る場合にはその両面に)、署名・押印が必要になります。

誰が相続人になるのか確認する

現時点で法定相続人になる予定の人を推定相続人と言いますが、誰が推定相続人になるのか確認します。

誰にどれだけ財産を渡すのか決める
  • 誰に何を渡すのか
  • 誰にどれくらいの割合で渡すのか
  • 相続人以外の誰かに遺贈するのか
補足

極端に相続人への配分が異なったり、相続人以外に遺贈する場合は、遺留分を考慮した方がいいでしょう。
遺留分については、下記記事で詳しく説明していますので、ご参照下さい。

さあ、紙とペンを持って書いてみましょう

自筆証書遺言を書く紙は、どんなものでも構いません。コピー用紙、便箋、メモ帳など何に書いても有効です。また筆記用具も何で書いても有効です。ですが、保管を目的にするのですから、耐久性のない紙は避けるべきです。筆記用具に関しても、変造を避けるために、消しゴムで消すことのできる鉛筆や消せるボールペンは避けた方がいいでしょう。

財産目録以外はすべて自筆で書く

自筆証書遺言は遺言者本人の手書きで書かなければなりません。配偶者、ご子息であっても代筆は許されません。一部でも他人が代筆すると、遺言書は無効となってしまいます。
また、遺言の録音・録画なども無効です。必ず書面で残さなければなりません。

署名する

自筆での署名が必要です。遺言者本人だと判断できる場合は、通称やペンネームでも可能とされていますが、トラブルを避けるためにも、戸籍上の姓名を記載する方が良いでしょう。

押印する

遺言書の押印については、使用する印鑑について特に指定はありません。認印でも良いとされています。しかし、遺言者の意思を明確に伝えるためにも、遺言書に使用する印鑑は、実印を使うようにしましょう。

日付を入れる

遺言書を作成した年月日を、正確に記載します。
「令和5年1月吉日」などのような省略した書き方は日付が特定できないため、無効になります。
「令和5年1月15日」と日付が分かるように記入しましょう。

内容を訂正する場合

遺言内容の一部だけを訂正したい場合には、訂正したい箇所に二重線をひき、修正し押印します。
更に下の余白部分に、修正した箇所を指定し、○〇文字削除、○○文字追加と記載し、署名する必要があります。
尚、自筆証書遺言の内容を変更し新たに作成した場合は、新たに作成した遺言が有効となり、古い遺言は無効になります。

付言事項を記載する

付言とは、法的な効果はありませんが、家族への感謝や希望などを伝える大切なメッセージです。
例えば、遺言書で遺産分割を法定相続分と異なる割合で指定する場合、取り分が少ない相続人には不満が生じることが考えられます。
何故そのような財産の分け方をするのか、その理由を付言事項に記しておけば、揉め事になるのを防ぐことができるかも知れません。

遺言執行者を決めておく

必ず必要という訳ではありませんが、遺言の内容にもとづいて相続の手続きを進めていく遺言執行者を決めておくと安心です。
遺言執行者がいなくても、相続人全員で相続の手続きを進めることはできますが、相続人が多かったり、遠方に住んでいたり、相続人間で揉めてしまうような場合には、手続きを円滑に進めにくくなります。しかし、遺言執行者を選任していれば、そろえる書類も少なくなり、遺言執行者だけで手続きを進めることが可能になります。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

メリットデメリット
紙とペンさえあれば、気軽に作成でき、いつでも書き直しができる要件を満たしていないと無効になってしまう可能性が高い
遺言の内容を秘密にできる相続人にその存在を知られず、見つけてもらえない可能性がある
費用がかからない偽造されたり、破棄されるリスクがある
補足

2020年7月10日から自筆証書遺言を法務局で保管する制度が始まりました。この制度を利用することにより、紛失、偽造、破棄及び発見されないという心配はなくなります。また、裁判所で検認を受ける必要もありまん。しかしながら、法務局は、遺言の内容についての相談に応じてくれる訳ではありませんし、保管された遺言書の有効性を保証してくれるものでもありません。

自筆証書遺言は費用もかからず、すぐにでも作成可能ですが、民法に規定されている要件を満たさなければ無効になってしまう可能性があります。
財産を調査し、相続人を把握し、また遺留分を考慮に入れながら、原案作成のお手伝いをさせていただきます。
まずはお気軽にご相談いただければと思います。

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